肥満遺伝子からみたダイエット、その1
更新日:8月31日
肥満遺伝子検査で何がわかりますか。
肥満の成因は、食生活や運動習慣などの生活習慣要因と親からの遺伝的要因に大別されます。成因の6割を占める生活習慣要因は変えられますが、残る4割の遺伝的要因は変えられません。一般的に肥満遺伝子には、①食行動調節系遺伝子(高カロリーの食事を嗜好し、過食傾向がある)が2タイプ、②エネルギー代謝系遺伝子(脂肪の蓄積部位や筋肉の状態に応じて基礎代謝が増減。内臓脂肪型、皮下脂肪型、混合型、やせ型、標準型に分かれる)が5タイプあり、その組み合わせ①×②により、合計10タイプに分類されます。
つまり、肥満遺伝子検査はある人が太りやすいか太りにくいかを調べる目的で行われます。そしてどの遺伝子が変異しているかによって、1基礎代謝が高いか低いか:基礎代謝が低いと同じものを食べても人より脂肪がつきやすい。2脂肪が付きやすい部位は内臓脂肪型または皮下脂肪型か:内臓脂肪型は将来、高血圧や糖尿病など代謝障害(メタボリックシンドローム)を起こしやすく、心血管病の発症リスクが高い。3遺伝子のタイプにより、糖代謝が低いか脂質代謝が低いか:あなたは日常どのような食事をとるべきか、どんな栄養素に気を付けるべきかがわかります。
遺伝子検査の結果をどう受け止めたらよいのでしょう。
肥満外来を受診される患者さんにとって、この遺伝子検査の結果を聞くことは最初の審判と言ってよいでしょう。でもその結果には、ほぼ100%の皆さんが納得されるから不思議です。私自身も検査を受けていますが、2つの食行動調節系遺伝子が陽性(根っからの食いしん坊だという事実)、またエネルギー代謝系遺伝子は、内臓脂肪と皮下脂肪のどちらも沈着しやすく、基礎代謝が標準より215キロカロリーも少ない(ジムでまじめに運動している割には体重が落ちないのが不思議だった)、という嬉しくない結果でした。しかしこの肥満遺伝子というのは、元来人類が氷河期など食べ物がない時代を生き抜くために体の脂肪を無駄に燃やさないよう変異した遺伝子であり、少ない摂取カロリーでの生存を可能にしたありがたい遺伝子なのです。
生活習慣要因は変えられるが、遺伝的要因は変えられないと申し上げました。しかし遺伝的にみて、自分の太りやすい体質がどこにあるのかを知ることは大事です。たとえば、糖質制限ダイエットは誰もがチャレンジして、それなりの減量効果はあります。しかしリバウンドする人も多いのは、ほんとうに自分の体質に合っていないためではないか、と疑ってみる
ことも必要。肥満遺伝子結果から、自分の太りやすい体質に合わせて食生活を見直してみることは、リバウンドしないダイエットへの第一歩になります。
食行動調節系遺伝子はダイエットの大敵。
肥満遺伝子検査でまず問題になるのは、食行動調節系遺伝子。通称FTO遺伝子(脂肪量および肥満関連遺伝子)と呼ばれる遺伝子です。このFTO遺伝子が陽性の人は、本能的に高カロリー食を好み、過食しやすい傾向があります。研究によると、FTO遺伝子の陽性者は、1食あたり100キロカロリー多く摂取し、肥満、BMI、摂食行動と関連性があり、肥満のリスクが70%も高くなることが明らかになりました。
かくいう私も、このFTO遺伝子が陽性でした。FTO遺伝子陽性者は糖質、脂質の多いハンバーガーやフライドポテト、ポテトチップスなどのスナック菓子、いわゆるジャンクフードは禁物。若いころはさておき、私も最近はジャンクフードは食べませんが、日常、無性にチョコレートなどが欲しくなる時があります。ジャンクフードでなくても、たとえばパスタやピッツアなど、食べ過ぎれば、糖分、脂肪分ともに多い食べ物を、ついつい人より多く食べがちな人は、FTO遺伝子検査が陽性、高カロリー嗜好タイプの疑いが濃厚です。
このFTO遺伝子はたいへん厄介で、頭で理解していても、なかなか食行動を変容させるのは困難なのです。そこでカロリーの高い食べ物は食べ過ぎないよう注意は継続しながら、食欲を抑制する薬を使用します。マンジャロなどのGLP-1関連薬は、胃腸の動きを緩やかにして満腹感を持続させるだけでなく、脳の満腹中枢に働きかけて食欲を抑える作用があるので、満腹感を感じにくい過食傾向のあるFTO遺伝子陽性の患者さんには有効な治療薬です。
次回に続く。